カジノのある街のなるほど!と思った話し

 最近、家内が知人の学習塾から頼まれて、夕方だけ手伝いに行っている。
この最近のマカオの小学生、壊れてきている子が増えている、と言う事で独身の若い教員の卵たちでは手に負えなくなって来ており、子育ての経験がある人に手伝って欲しい、と招集が掛かった。



「手に負えないって、どう言うこと?」
と、聞くと、
「それって脳の機能障害じゃね?」
と言うケースもあるし、
「躾が完全にダメだわ」
と言うケースもある。

そんな中、職員のミーティングでこんな話しが出たと言う事で、その内容を聞いて関心する事しきり。

簡単にその話しを紹介しようと思う。

曰く、塾のオーナーはこう言ったそうだ。

『ここに来ている子供たちの親は30〜40代がほとんど。
そうすると親は10から20年前に働き始めた世代です。
その殆どがカジノの従業員です。
これは些か宗教的かつ道徳的な話しになってしまうのだけれど、あー言う仕事はやはり人の財布からお金を抜き取る仕事です。
本来の自分達の努力や創意工夫を積み重ねて行く仕事では無い。
これを否定する人はあまり居ないと思います。
それが当然の世界にいると、物事の感覚の基準が少々ズレてくるのではないか?と言う気がしてなりません。
その結果が今の子供たちのあのちょっと理解できない行動に結びついているのでは無いか?と感じるのです。』

小さい頃から両親は共働き。
子供は祖父母かメイドに預けっぱ。
朝から晩までゲーム三昧。
あれ欲しい、これ欲しいでなんでも買い与える。
レストランで見ても家族の会話も無し。
家族全員、皆んながゲーム三昧。
そしてカジノだから給料もそこそこ良い。

ウチもレースで海外を飛び回っていた時期があり、親よりもメイドにしか懐かなくなってしまい、これはマズイ!と思い方向転換した時期があった。

今は朝、家内が娘を学校まで送り、息子はバスで学校へ。
息子の学校は給食制度が無いため、自分が昼に学校へ拾いに行き、一緒にランチをとって再び学校へ。
夕方の娘の迎えは自分が行く。
その後、サッカーの練習でボロカスになった息子がヨレヨレになって帰ってくる。

コロナが始まり、危険を感じてメイドをすぐにフィリピンへ送り返した。
あの判断は本当に正解だった。
そうして自分達は家族の事は家族でやっていく、と言う事に切り替えた。

逆にその時に子供達は通っていた塾を辞めさせた(今、手伝いに行っているとこだが…。)。

全てがジャストタイムで良い方向に転化でき、この二年間はかつて経験した事がないくらい、家族で過ごす時間が増えた。

これは親バカと取ってもらって結構だが、子供達はどこへ行っても褒められる。
中には
『どうやったらこう言う風にできるのか教えてほしい』
とか
『これはやはり日本人の血が混ざっているからか?』
と聞いてくる親が後を絶たない。

むしろ聞かれるたびに子供達に「お前ら、何したの?」と聞くくらいだ。
つまり日本人の子供なら誰でもできる事が〝出来ないのだろう〟と言う認識で、家内は塾へ行った。

その初日、
帰ってくるなり
『ありゃダメだ。そりゃウチが褒められる訳だ。』
と呆れながら言った。

夕方六時を終わりの目標時間にしているそうだが、その時間まで宿題も課題も一切手を付けない。
基本的にその日の課題を終わらせないと、終わらない仕組み。
何度言っても手すら付けないと言う。
そして六時になると、親から何度も電話が来ると言う。
曰く
『何時に終わるんだ』
の連チャン。

『ありゃ、壊れてるよ』
と呆れて言う。

やはり、カジノのある街は、よほど人の教育をしっかりやっていかないと壊れていくんだね、と言う話しになったと聞いた。

そして壊れるのは、大人だけでは無い、と言う事だ。

もっとも、厳しい先生である家内。
何人かが娘の同級生や同じ学校らしく、娘はそれを言われるらしい。
その事で声を掛けられそうになると娘は
『あ、ママのことは私は関係無いから』
と逃げると。
「おまえまだ三年生で、もうそんな処世術を身に付けてんのかよ?」と頼もしくもあり、将来を考えるとちょっと怖くもあり。