海外メディアで報道 @大阪IRとMGMの動向

大阪のIRに関し、非常に不可解な思いをしていた。
それはMGMの本体や海外からの報道が無く、あったとしても日本の報道を紹介する英/中文のみであった。
これはMGMの本社が情報発信をしていない事を示している。


それがようやく大阪の情報に関してMGMに触れている記述を見つけた…と、言うレベルであったとしても、これは相当に貴重な情報である。

7月15日に出ていたニュースだが、そこにMGMの大阪に於ける現状が記載されていた。しかしそのニュース自体、少々腑に落ちないニュースである事は事実だ。

MGM Resorts said to be eying Genting Singapore investment


と題するそれは、シンガポールのセントーサ島でマレーシアのゲンティンが展開しているSingapore’s Resorts World Sentosaに対し、MGMが出資を希望していると言うニュースだ。
この時期の日本と同じアジア地域である。ひどく興味を唆られる情報だ。

ゲンティンのオーナー一族はマレーシアの超有名なリッチファミリーであるリム・ファミリー。その一人、リム・ハンベイ・ジョー。
知るも何もこの人と会う為に26年前に中国の地を踏んだ。新聞社の紹介で知己を得て、中国初の常設サーキット、珠海サーキットに投資した初代オーナーがこの人だった。



この珠海サーキットでの看板権を取り日本総代理店になるべく、電通に予算を工面してもらい、ノコノコと中国に出向いて行った。あれで自分の人生は大きく変わった(狂った?)。今となっては良い思い出と感謝で詰まっている。

記事にこうある

US casino giant MGM Resorts International has reportedly held discussions with Malaysia’s Lim family over a potential takeover or investment in Genting Singapore, the parent firm of Singapore’s Resorts World Sentosa.
訳文:米国のカジノ大手MGMリゾーツインターナショナルは、シンガポールのリゾーツワールドセントーサの親会社であるゲンティンシンガポールへの買収または投資の可能性について、マレーシアのリム家と話し合ったと伝えられています。

これは聞き捨てならない情報だ。
それでなくとも台所事情が苦しいMGMである。
アジア地域強化を打ち出しているとは言え、マカオのライセンスも新法に変わる12月以降について少なくとも決定では無い。株主構成も大きく変わる可能性すらある。
そんな時に新規に投資するのは可能だろうか?

大阪でのパートナーはオリックス。
オリックスの株を買うのであればまだ納得いくが、この記事に書かれているのはゲンティンである。
これから始まるものの、訴訟ネタを含んでいて信じられないレベルのど素人ぶりを余す事なく発揮している大阪IRと、ゲンティンのどっちを買うか?と聞かれれば普通は間違いなくゲンティンを買う。
なぜなら現在、既にキチンと運営されているからだ。

そして気になる記述だ。

While Bloomberg said MGM has declined to comment on any discussions it may have held regarding Genting Singapore, the US casino firm is already looking to expand its Asian presence and is favored to win a license to develop a US$10 billion integrated resort in Osaka, Japan.
翻訳:ブルームバーグ氏は、MGMがゲンティンシンガポールに関して行った議論についてコメントすることを拒否したと述べたが、米国のカジノ会社はすでにアジアでのプレゼンスを拡大することを目指しており、日本の大阪で100億米ドルの統合型リゾートを開発するライセンスを獲得することを支持している。

この件についてMGMはコメントを避けているが、大阪での事業に関しては〝その動きを支持している〟に留めている。
この「支持している」と言う単語が非常にクセモノだ。決定でもなければ確定でもない。その動きに対して「その件に関し動いて良いよ」或いは「応援してるよ」と言う範囲に留まっている事を意味している。

そしてこの記事が重要だ。


ここには大阪IRの計画が裁判に突入する場面となった事を比較的詳細に伝えている。

但しこちらの記事は内容がかなり不正確だ。

Osaka has teamed with United States-based casino operator MGM Resorts International and Japan’s Orix Corp as its private-sector partners for a tilt at an IR. The initial investment from the private-sector partners is put at JPY1.08 trillion, according to previous statements.
訳文:大阪は米国を拠点とするカジノオペレーターであるMGM ResortsInternationalおよび日本のオリックスとIRの事業のためのパートナーとしてアライアンスを組んでいます。前回の発表によると民間パートナー(オリックス等)からの初期投資額は1.08兆円だと言います。

これは明らかな間違いである。

またここも違う。

Casino-supporting parties won all four national parliamentary seats up for contention in Osaka in Sunday’s election for Japan’s House of Councillors, according to GGRAsia’s Japan correspondent.
GGRAsiaの日本特派員によると、カジノを支持する政党(維新の事)は、日曜日の参議院選挙で大阪での力をより強くする為に4つの国会の議席すべてを獲得した。

この部分が完全に違っているのは皆さんご存知の通り。

いずれにしても直近に出たMGMに関する情報が海外で出るのは非常に良い話しで、この大阪の様なデタラメなプロジェクトを米国の上場企業が進めているのが明るみに出れば訴訟のリスクが一気に高まる。訴訟大国のアメリカである。いくら求められるか分かりゃしない。
それ故にMGMは海外で情報が出ない様に努めてきたと思われる。あまりに出てくる情報が少ない事からもそれらを推察できる。

しかしその結果、少ない情報の中からまさか他のIRの買収に動いていたとは大阪にとっては青天の霹靂だろう。
「それとこれとは関係無い」と大阪の関係者やイシンジャーは相変わらずの詭弁を振うだろうが、MGMは株価が低迷どころでは無く、火の車の真っ最中である。


ロックダウンなどが解除され環境が整い、持ち直したかと思われたが市場が元に戻らないと言う、コロナ禍後特有の流れに喘いでいると断言しても良いだろう。年初からの動きを見ればそれが’事実であると言える。またゲンティンの情報が流れた7月14日以降、市場にはポジティブに捉えられたと見えて上昇傾向に転じている。

上場会社であれば大阪案件をこれからのポジティブな案件として積極的に打ち出し株価を上げて行き、ネガティブな要素を取り消すコンテンツとして積極的に使いたいところだろうが、何せド素人な大阪の連中との案件だ。
松井や吉村は「民意を無視する」と言う事が、どれだけの事業リスクを生み出すかが全く分かっていない様である。またその周辺に張り付いている政策アドバイザーを名乗る連中が如何に大した事が無い連中であるか?を、この事実が如実に証明している。

以下の記事の通り、MGMは2020年6月にこれだけの〝身を切る財政策〟を断行した。


日本に進出を目指してきたIRの運営を行うカジノ業者の多くがコロナ禍で業績が悪化していて、特に第2四半期はさらに赤字が膨らむと予想される。大阪に進出を予定しているMGMリゾーツは、いくつかの米国にあるカジノ施設を売却して80億ドルの資金を調達してこれを日本への投資に向けようとしたものの、コロナ対策で手元資金と投資資金を使い果たしてしまい、また売却した施設をリースバックして使うため借金が増加するなどして、その目算が狂ってきている。

それを如実に示しているのが下記の株価だ。


2020年6月5日の財政策で一旦上昇するもその後が伸びず、投資格付けでも下記の通りのリポートの有様。

同社の格付けは『BBマイナス』で、『シングルB』の一歩手前で投機的格付けにまで下がっており、市場の評価も落ちてきている。ということからして、大阪への進出はとても無理だ。いずれはMGMも撤退を表明するのではないか。このほかの業者も日本への進出に当たり、100億ドルを投資すると言われてきたが、どの業者もラスベガス、マカオ、シンガポーツなど地元での業績が赤字に転落していて、日本に巨額の投資をする余裕がなくなっている。

現在では本社売却を行なった直後より少し上がった程度で流石にこれは厳しい。

おそらくゲンティンの買収情報は観測気球として上げた形跡もあり、市場は確かにポジティブな反応を見せている。
訴訟含みの大阪と、既に出来上がっているSingapore’s Resorts World Sentosaの買収で市場の反応を冷静に分析したとも受け止められる。

このチャートを勘違いしてはいけない。
「2019年以前の状況と変わらないじゃないか?」と主張するアホも出そうだが、そうでは無い。彼らは本社を失い、2019年以前には無かった更に大きな借金とリースバックをしている本社の支払いを抱え、尚且つ集客が伸び悩み、更に稼ぎ頭のマカオはドン底である。
もうポジティブな要素はどこの引き出しの中にも見当たらない。

一度、海外に伝わった訴訟の情報はこれから更に、彼らのこれまでに築き上げた信用や資産を蝕んでいくことだろう。
こう言うソリューションに手をキチンと付けられないその理由が「市長や知事、その周辺連中の能力不足と為政者のスーパーチキンなハートが原因」ではMGMの受けるダメージはあまりにも浮かばれないが、先の統一教会じゃないが〝信じた相手が悪かった〟と言えば解決するモノなのか?


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