ようやくプチロックダウンからの解放 @但しまだ行動制限中の巻



それは6月19日に唐突に始まった。
「市内感染が出たらしい」

もし本当に市内で感染が出たとしたら、2020年1月から厳しい規制が始まり、2021年8月頭に一度市内感染が出て、その後の9月に隔離施設内で発生。それについでの今回が三回目となる。

その時の感染者は家族で中国に遊びに行ったか何かで感染して帰ってきて、その周辺に感染が広がったが、陽性反応が出ただけで終わり、みな胸を撫で下ろした。

しかし今回はどうも様子がおかしい。
また中国からか?と訝っていると政府から発表。
「B.A.5XXX」で「中国で流行っているものでは無い」とアナウンス。


その一週間ほど前、数日続けて台湾からのマンゴーや、南米からの冷凍食品に付着していたと言う事で全量廃棄した。どうも英国などで流行っているのと同型のモノであるらしい。
しかしそんな悠長な事を言っている場合ではなかった。

10人、20人と日増しに加速していく。

そして6月19日のその日、政府はまず学校を止めた。
この段階では再開は未定。
そして三日後の6月22日にこのまま夏休みに入ると宣言。

問題は学年末試験だった。
小学校5年生から落第があるこの国で、学年末考査をしないとどうなる?とPTAのあいだで懸念されたが「普段の生活態度や小テスト、宿題などを考査に入れる」と数日内に発表があり全員進級となった。
可哀想に、六年生や中学生はそのまま卒業式。
けれどこれは仕方が無い。

公立病院が一つ、私立の孫文記念病院が一つ。
計二つしか大きな入院施設が無いこの地域ではとにかく〝医療崩壊〟しない事を最優先に考えなければならない。

しかし感染者は最終的に1,820人まで膨らみ、市民に緊張が走った。



検査会場は最大で約60ヶ所設置。大規模IRも会場提供した。
36時間に一回の全市民PCR検査。
抗体検査は各自自宅で24時間に一回。
リスボエッタ、シェラトン、パリシアン等が続々と隔離ホテルの提供に手を挙げてくれた。


全部ファイブスターホテル。
恐らく世界で一番、ゴージャスな隔離ホテルだろう。
市民は「これなら隔離も良いかも?」と冗談を飛ばした。

それに加えてマカオドームに野戦病院を設置した。


これで何とか6,700床を確保し、約670,000人の市民の1%が感染したとしても、病院に行く手前の経過観察で対応できる様に病床を確保し、病院を崩壊させない為の施策を実施した。

たった1,820人と言っても用意した病床の20%近い。
この時が最も緊張した時だった。


こう言う行動についてマカオ政府は信じられない程、的確な動きをする。

その行動原理の原因を考えた事があり、恐らく次の理由が大きく影響していると思われる。

  • 議員・公務員問わず、もし日本で頻発する様な利権絡みの問題を起こしたら、最低でも10年は臭い飯を食わされる故に、利権争いが生じにくい行政の体制になっている。
  • 国際サーキットの無い国で国際レース(国際規格グレード2を取得)を70年近くやっている。街の特性を活かし、無いところから何かを作る為の臨機応変に対応する事が伝統的に活きているのではないか?
  • 公務員、IRの社員も含めてphase-1、phase-2と段階を追っての対応マニュアルが出来ている。政府の指示が掛かった時、すぐに動ける体制を常日頃から敷いてる事。
  • 指揮を執る保健局のトップが素人判断せず、SARSの権威である鐘 南山先生のアドバイスを忠実に守り、対応策を組み立てた事。
  • 徹底した検査・マスクの着用の指導。検査キットとマスクの配布。それが可能となる備蓄。

これらが功を奏したと言える。


ここでこの鐘先生の記事を良く読んで欲しい。
そしてURLを良く見て欲しい。

このURLは日本国政府の関連、独立行政法人などが使えるドメインであり、またこの記事は2020年04月13日、Covid-19が発生して3ヶ月目の記事である。

これを読むと、日本国及び関連官庁とその傘下の自治体が取った行動は正しかったのか?と首を捻ってしまう。
そもそもこの団体の形式から言って、国から予算が出ているはずである。
これを活かしたのか?
キチンと読んだのか?

鐘先生は

  • 新型コロナの「インフルエンザ化」、十分な証拠はない
  • ワクチンはすぐできることはない
  • 集団免疫は最も消極的な手段
  • 中国の感染対策、最も共有すべき経験は実行力

結果だけを見ると、全てにおいて逆張りをしたかの様に見える。
また注目すべきはここだ。

中国は感染症との戦いで、主に次の措置を講じた。(1)流行中の地域を封鎖し、感染を遮断する。(2)末端の集団対策・治療、すなわち共同感染対策。現在の感染対策の中心も2つで、距離を置くこととマスクの着用だ。
そのため最も共有できる経験は実行力だ。医療水準及び技術力が中国を大きく上回る国は多いが、感染症に対して為す術を失っているのは心の備えがなく、断固とした措置を講じなかったためで、これにより多くの医療従事者が感染した。この防御ラインが突破されれば、コントロールを失いやすい。

中国本土の様に、感染者のいる家のドアを溶接して出られなくしてしまう等は論外だが、数多くのホテルがある日本である。マカオと同じ様な対策はいくらでも取れるはずである。
それをロクに活用させないばかりか、補助金を受け取って「儲かりました!」等と恥を知らない乞食経営者が財界を支えている様な国では無理な相談なのか?
そうでは無いと願いたい。

また市民への生活補助の資金もすぐに配布された。
プチロックダウンが決まってすぐにひとり当たり8,000MOP/約131,000円の支給が決まった。
予め市民が持っている消費カードにチャージされ、食事やスーパーでの買い出しなどの生活費を払える仕組みになっている。
施行されてから二営業日ですぐに使える。
また今月も、もう一度支給されるらしい。


こんな小さな小国が出来て、なぜ日本の自治体が出来ないのか不思議で仕方が無い。
「人数が少ないから出来る」と言う言い訳が聞こえてくる。
そんなの街を区分けすれば良いだけのハナシだろ?
日本は住民台帳という、世界でも稀なシッカリとした住民のデータを長年の積み重ねを掛けて持っている。
それがあって出来ないわけがない。

検査は10人を1グループにして混合にする。
もしこのグループの誰かが問題を生じた場合、そのグループごともう一度やる事になる。
但しこのPCR検査を受けに行くには先に配られている抗体検査キットで陰性でなければならない。
この抗体検査キットの結果をアプリに登録すると検査場に行ける。

この段階で陽性が出た場合、まず自宅待機を命じられる。そこから自分で救急または警察に連絡する。専門チームを自宅に派遣し、陽性者は付き添われて病院へ行く。病院で入念な検査を受けた後、豪華な隔離施設無料ステイのご褒美を受ける。経過観察をして無症状の人は一週間ほどで帰れる。
もちろん症状のある人は即病院へ連れて行き入院措置を取る。


こうして7月末には市内感染をゼロに押さえ込んだ。
これから数週間掛けて正常な状態に戻していく。

しかしこれからも数回、これを繰り返すしか無いでしょう。
ウィルスが弱くなるまで仕方が無いですね。

そう言えばマカオのカジノは前年比90%ダウンです。
ただロックダウンしていましたからね。

コロナ対策にせよ、カジノ反対にせよ、データを正しく消化、運用出来なさすぎです。
「マカオを見てみろ!前年比90%ダウンだ!カジノはオワコンだ!」と叫んでも、戻って通常営業になった時、推進派に「なに言ってんだ?これだけの数字が出ているじゃないか?」と論破され相手にされずに撃沈するのが目に見えます。

私はレースカーのセットアップを出す時、必ずコンディション、それは気温や湿度、風向きや路面温度にタイヤの状態のデータに加え、ドライバーの心理状態や呼吸の状態を見て、それらを考慮した補正を掛けて答えを弾き出します。その瞬間、その瞬間を比べても、比較する土台の分母が違うのだから比べるだけ時間の無駄です。

正しい情報を集め、正しく計算し、正しく運用する。

いま日本の国や自治体に足りないのはその部分ではないでしょうか?