秀才と天才に出会った母国への帰還 その1

三年半ぶり、約一ヶ月にわたる母国への帰国も無事に終えた。
何日間か体調を崩したが、日々楽しく新しい発見に相次ぎ、行く先々で温かい歓迎を受け、忙しくも楽しい日々を過ごせた。

関わったすべての方々にまず最初に厚く御礼を申し上げます。


今回の旅は
「いくら何でも、もうそろそろ帰国しないとまずいだろ?」
と言う流れと
「帰国して作業をしないと前へ進まない案件」
など、帰る前からいくつもの複雑な状況にあった事。

一つはレースの件でエンジンのアレンジが間に合わず、初っ端から欠場し、主催者に謝らなければならない状況にあったりもした。
しかし自身の考えていたパッケージにそのものにも根本的な問題があり、長年の友人でありかつパートナーの方に軌道修正をアドバイスされるなど
「結局、来てみないと分からない」
と言う事を身を以て体験したりした。

仕方が無い。
三年間も事実上、ロックダウンをしていたのだ。

今回、日本に帰ってからと言うもの、仲間である一人の女性がそれはもう献身的にサポートしてくれた。

彼女自身も大切な案件や大きな問題を抱えている時期で、もちろんそれは自分自身もできる限り手伝ったが、彼女のサポートはそれ以上であり、申し訳ない事頻りだった。

数ヶ月前に彼女にプロデュースを頼まれたが、まだ実際に会っておらず、彼女自身のポテンシャルも解っていなかった為、返事は引き伸ばしていた。
ただそんな状況の中でも出来る限りのアドバイスをしてはいた。

「問題を解決し、思った通りに進むにはどうしたら良いのか?」

これが彼女自身の課題だった。

策に走り策に溺れ、自分自身の策に狂喜乱舞する一部の輩は全く分かっていないのだが、成功させたければさせたいほど
「自分自身の根本的な生き方」
にその出発点の因を求めてゆくしかない。
策に翻弄される輩ほど、策に策を重ねる。そして最後は自分で編み出した策に溺れて沈む。

逆に本当に結果を出す人は、まず自身の生き方を糺す。
正義と紛いモノの勝負の分かれ目は、スタート地点から違う。

その為、彼女には数ヶ月前から相当手厳しい事を言い続けてきた。
激しい怒りを露わにしている事もあった。
また失望のどん底に沈んでいる事もあった。
言い古された言葉だが、その都度叱咤激励し道を誤らないように、言葉のガードレールを敷いたつもりだった。
     

遅い時間、早春の冷たい雨がそぼ降るなか、彼女は仕事を終えクルマを走らせて待ち合わせの場所に来た。

時計は既に二十三時を回っていた。

疲れているだろうが、そんなそぶりも見せずに彼女は気丈に振る舞った。こうして彼女との初対面は寒く、遅い時間に疲れた身体を引きずりながらも、気配りをしてくれたおかげで楽しく明るいものとなった。

以前は深夜だろうが何だろうが開いていたファミレスが開いていない。コロナですっかりと様相が変わってしまったのだと言う。

しかたなしに二人で居酒屋に入り、アルコールの無い烏龍茶で乾杯をし、キュウリに味噌を付けてポリポリと食べた。その味噌がまた格別に美味しく、ここでも深夜にもかかわらず楽しさに華を添えてくれる結果となった。

そしてここに至るまでに準備をしてきた事、こなした業務、準備などを報告しあった。時間はゆうに午前一時を回っていた。

彼女自身の問題解決の為の戦略は既に実行をかけてきたが、それはとにかくハードルが高かった。高かったのだが、報告しあっているなかである事にふと気がついた。

進んでいる。

つまり高いハードルのはずなのだが、なんだかんだと言いながら、確実にそれを乗り越えている。それも彼女が自分自身で勉強し、研究し、一歩ずつ詰めて壁を乗り越えている事に気がつかされた。

「え?こんなにアタマが良かったっけ?」

と思わずにいられない進捗ぶりに驚いたのを、今でもハッキリと覚えている。
彼女はもっとも重要な案件を無事に済まし、その問題を大きく大きく一歩前進させた。
いまは詳しく書けないが、のちに問題が解決した時にその内容を公表したら、皆、声をあげて驚くはずである。
そのくらい、大きな壁を越えていた。

「コイツ、秀才なんじゃないか?」

自分の頭の中にふと、そんな言葉が浮かんだ。

「子供の頃のあだ名ってなに?」
たわいも無い会話の中で返ってきた答えに笑った。
「わたし?先生に付けられたあだ名で宇宙人」
それが非常にマッチしてると思った。

この能力は助けが必要だと感じた。
どの様な助けか?
それは、その優秀な頭脳を然るべき方向へと引っ張るガイドラインが必要なのだ。ガイドラインさえ間違えなければ、その明晰な頭脳で処理されて出てきた行動と指令は、恐ろしいほどの結果を齎す事は火をみるよりあきらか。

一部の人物は、その彼女のポテンシャルを見誤り、誤った判断と自身の過去の成功事例に酔いしれたその結果、ジワジワと迫る司直の手に怯えている事は明白である。

彼女は言う。
「私は殺され掛かった。手綱を緩める必要は一切無い。」

頭の良さの水準が最初から違う。自分でさえ
「この人と喧嘩しないようにしよう」
と思うほどだ。

そんな秀才と手を握りあえた事は、自分自身にも大きな力になる事は明らかだ。そう言う意味で
「この人と知り合えた事は、自分にとっても大きな武器になる」
と考えた。

休日に京都を散歩し、平安神宮へ向かう道の途中、閃いた。


彼女をどこかへ所属させ、彼女の仕事を円滑にこなす為の器は何が必要で、どう言うマンパワーを揃えなければならないのか?などと考えた。
このアイデアはすぐにまとまり、関係者へとすぐさま連絡。
各方面はすぐに了承が取れて、思った通りの体制が組めた。

この日、彼女は自身の仕事のもっと大きな山場を迎えていた為、この事を告げるのは日にちをズラして伝えた。内容を聞いてちょっと驚いた様だったが、すぐさま喜びに変わった様だった。

オセロはクルクルとその色を変え、自分達の陣地を拡げていく。

彼女自身、前から懸念していたこれからの体制と将来のビジネスのスキームが構築出来た。
わたし自身も
「こんな簡単にパズルのピースがハマるもんかね?」
と自分のアイデアながら驚いた。

「正しい道が開ける時は、そう言うものだ」
と言う事を、これまで何度も体験している。

その秀才は、自身の持つ才能を開かせるための舞台装置を作ってあげなければ宝の持ち腐れとなる。しかしその舞台装置ーそれはあるべき場所と時間軸、それがピタリとハマればその才能は存分どころか、専門家でもこうべを垂れるほどの力を発揮する。

おそらく輩どもは目測を見誤ったのであろう。
あまりにも浅はかで、あまりにも愚かな目測の誤り。

「策士策に溺れる」
とはよく言ったもので、これから自らの行いの報いを嫌と言うほど味わう事になる。そしてそれは自らの立ち位置を大きく変える。

これがひとりの秀才との出逢いだった。

そして、舞台を替えて、もう一人別の、これもあり得ない「天才」に出会う事になる。

それはまた次回に。



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